2020 The New Earth A travel report【12】個の自立

2015/12/20


「2020 The New Earth A travel report-11」の続き…

個の自立

「お前がお前自身の王なんだ。君は以前みんなにそう言ってた。それ、何か効果あった?」

「それが人生に対する一般的態度になったよ。当時、俺がそう言ったのは、周りの連中がみんな俺より上だと思って、俺に何をすべきか言ってきたからだ。今は、みんながそれぞれ独立した存在であることを認め、我々みんなが自分自身の王でいられる。他の誰かの王ではなくてね。それについて誰もがこんなふうにわざわざ言うわけじゃない。当たり前のことになったんだよ。今日では誰もが、自分自身の王であり、自分自身の人生を生きている。だから、もう他の人に指図する必要なんてない」

「Terra Nia、我らの地球、自由民の同盟」僕はじっくり考える。 「そんなとこだな」とバウチが笑う。「当時、マザー・アースの地域分割を止め
ることが、計画の一部にあった。時間もかかったし、他の同種のネットワークか らの助けも必要だった。でも結果が出た。TerraNia.org website はとても有名に なった。創立者の Johathan Leonhard が、みんなのものであるのは地球だけで はない、ネットワークもみんなのものだ、と適切な言葉で説明してからは特に。

それまでは、彼は自分の利益を追求していると糾弾されていた。ところが、非難
していた連中の方が、それ以上に痛手を被ることになった。こうした問題を抱え
ていたのは彼だけじゃない。このようなことをしていた者はみんな同じ目に遭っ たよ。一番酷っかったのは Thomas。『Eigiland』とその背後にある発想が、人
々をインスパイアした」 「そうだね。そうだろうと思うよ。一週間前、僕は彼と船に乗ったんだ。Eigiland 賛歌のビデオを君が一緒につくったでしょう」
「おー、そうだよ。忘れかけていた」バウチがまた笑った。「その歌、流行った
んだぜ。どういうわけか、タイミングがよかったらしいんだ。俺の知る限り、今、
トーマスとケイティはバハマで船に乗ってるよ。だが、歌はまだここにある。し
ばらく聞きも歌いもしなかったがね。まだ覚えているか?」彼が聞いたので、
「もちろん」と答えた。すると彼は素早く立ち上がってギターを持ってきた。

「また一緒に歌おう。こんなエキサイティングな時代のサウンドトラックに入っ
てるよ」

(ドイツ語)
Jeden Morgen fruh aufstehn
zur Schule oder Arbeit gehn
und den lieben langen Tag
das zu tun was Ihr mir sagt..
darauf hab ich keine Lust,
denn das erzeugt in mir nur Frust,
ich tu lieber was ich mag
weil ich da viel mehr von hab.
Wenn ihr nur wusstet,
oh wenn ihr nur wusstet,
oh wenn ihr nur wusstet
wie simpel dieses Leben ist.
Das Leben ist schon
das Leben ist toll
das Leben ist wunder-voll
weil alles kommt wie es soll.
Ihr sagt mir was ich denken soll,
doch denk ich das, geht’s mir nich so toll.
Ich folge lieber der Natur,
dem Miteinander, der inneren Uhr
Die Sonne scheint, ich fuhl mich frei,
genies den Tag und hab Spass dabei,
wir sitzen hier in einem Boot
zusammen halten wirs im Lot
und legen an ner Insel an,
auf der man frei sein darf und kann.
Lieben alles um uns herum
und nehmen keinem mehr was krumm.
Wenn ihr nur wusstet,
oh wenn ihr nur wusstet,
oh wenn ihr nur wusstet
wie simpel dieses Leben ist.
Das Leben ist schon
das Leben ist toll
das Leben ist wunder-voll
weil alles kommt wie es soll.

「いいねえ、いまだにグッとくるよ。僕、この歌好きだな。Rubin や彼のつく ったタイムトラベル・ビデオのこと覚えてる? 君が仲間とつくった最初のビデ
オを取り上げていたよね。彼のビデオの中で、彼は、彼の今においてしゃべって
いた。君の今におけるレコーディングについて。そしてリスナーが、リスナーの
今において、どのように聞いているかも。それぞれまったく異なる今なんだよ」

バウチは僕を見てニヤリとする。

「それはまさにルービンが、例の本を読んだ後に言ったことだよ」

「何の本?」

「君がトリップから戻ってすぐに――トリップというのは、俺が今、本当に起き
ているのを見てるやつ――君の体験談を書いて欲しいと、俺に頼んできた。最初、俺は疑っていたが、すぐに書き始めた。6 月の終わりには書き上がったよ。それ からだよ、回り始めたのは。ネイサンは昨日そのことを言っていたんだ。俺たち
みんなが君の体験談を知っているのはそういうわけなんだ。よく知られているんだぜ」

僕の口がぽかんと開いていた。今彼は何て言ったんだ? 僕が有名だって?
「有名じゃないよ」とバウチが言う。彼も僕の考えが読めるらしい。「君が考え
ているようにじゃない。大勢の人が君のことを知っているが、君が誰かは、誰も
知らない。君はいつでも公衆の目に晒されるのを嫌がっていたが、それは今でも
変わっていない。だから俺は、君が無名のままでいられるように本を書いたんだ。

ネイサンにまた会った時にでも、彼の意見を聞いてみればいい。それについては
俺の方はしっかり伝えたからね。俺の観点から見ていることを君に知ってほしい
のだが、個人的な平和を築くことに関して、君はいつでも良い手本だったよ。君
は今でも偉大な無名人であることを楽しんでいる。俺たちみんなもそれを幸せに
思っているよ。それに俺は、もし俺たちが君のことを人々に明かしていたなら、
ことの成り行きは違ったものになったと思う。魅力のない本になっていただろう」

僕はこのすべてを消化しなければならない。バウチもそう思ったらしく、何も
言わずにギターをつま弾いている。少し経ってから、クリスティーナがテラスに
戻ってきた。彼女は僕に温かい挨拶をくれ、庭で二人の男の子たちと植物を愛で
ていたのだと言った。バウチも彼女に温かくて親密な挨拶をした。僕はサミラが
頭に浮かんだ。ウィリアムとステファンもやって来て、光り輝く笑顔で挨拶して
くれた。二人とも、二人のネイサンがいることを楽しんでいるようだ。

とても面白そうに見ている。彼らもその話を知っているらしい。彼らはあまり質問しない
が、すごく楽しんでいる。彼らの目は輝いていて、まるでクリスマスのようだ。

彼らはおかしな子たちで、はしゃいでいた。しかし、それでもどこか穏やかで、
イライラさせるようなところは何もない。ウィリアムが椅子の後ろから空気注入
式のマットレスを持ってきて、僕に膨らませてくれと頼んだ。
彼の役に立てて僕は嬉しい。空気を入れ終わると、二人はそれを持ってプールの
方へ消えて行った。クリスティーナがキッチンからサンドイッチを持ってきて、
僕らと一緒に座った。

「どうやって二人は知り合ったの? 一緒になってどれくらいになるの?」僕は
知りたかった。

「インターネットを通じてよ」とクリスティーナが言う。「2005年には、もう Face book で知り合っていたの。連絡を取り合っているうちに、お互いにぴんと来るものがあった。それで私ここに来たのよ。あなたのタ
イムトラベルから数日後のことよ。あの年は変化の目まぐるしい夏になったわ。
ここら辺も随分変わったのよ。あなたのトリップのせいだけじゃないの。バウチ
は農場主のバーバラとマイケルから圧力を受けていた。彼の生活に酷く干渉して
いたのよ。特にバーバラは、彼女の投影物を彼の中に見ていたから、すごく取り
乱していた。あなたもそのこと覚えているでしょう。あなたもバウチに味方した
せいで、とばっちりを受けたのだから」

おー、そうだとも。よく覚えているよ。昨日はもう一人の僕と話しているうちに
思い出し、その前日は、まさにその真っ只中にいたんだ。随分遠い昔のように思
えるけどね。

「その晩、クリスティーナはフェリーに乗っていたんだ。俺が、クリスティーナの車がレッカー移動されて、本土で立ち往生していると Face book に書いたもんだから、マイケルがバーバラを連れてきて、俺に対してぐちぐち言い出したん
だ。俺はすべて大丈夫だと感じていたが、それを証明できるものが何も無い。そ
れでマイケルがその晩、俺をフィンカ(訳注:農場。典型的なフィンカにはコテ
ージ、農家、建物などがついている)から追い出した。それは、翌朝、クリステ
ィーナへの悪い知らせとなったよ」

「私は最初、バウチが私をからかっていると思ったの。私を招いておきながら、
警告なしに突然ホームレスになったなんて言うんですもの。私にとって、彼はも
う大した存在じゃなくなった。引き返して真っすぐ家に帰りたかったわ。一夏滞
在する予定だったけど、数日しかいなかった。そしたら、住むところがなくなっ
たもんだから、バウチも私にくっついてウィーンに来たのよ。私は当時ウィーン
に住んでいたの」

「それからどうなったの? ハリウッド・ロマンスみたいだね」

「いいえ、そんなんじゃないわ。ウィーンで私たち別れたの。私にはバウチを本
気で愛せなかったわ。彼に関する噂は、彼への疑念を抱かせるものばかり。私も
彼のネガティブなところばかりたくさん見ていたから、もう彼と一緒に過ごせな
くなった」

「うん。俺も思い出すよ。当時はこんなふうに感じていたんだ。彼女に頼ることは、即ち『Eigilander』たることを否定することだ、と。だから俺たちは別々の道へ進んだ。それは本当に俺たちを自立させてくれたよ。俺はこの期間に君の本
を書き、旅行しながら徐々にまた自分を取り戻していった。俺たちは、まだ連絡
は取り合っていたんだ。そして何か否定できないものを、俺たちの中に感じた。

俺たちは再会し、相手の自由を許すことで、個人として隣同士で共に存在すると
いうことを、ゆっくり学んでいった。俺たちは、俺たちを強く結びつけるものを
体験したんだ。無条件の愛だよ。俺には、俺たちがいつ『一緒になった』のかわ
からない。そのような日付は存在しないからだ。俺たちは一緒に過ごす時間を楽
しんでいる。充実した時間だからだ。だからといって、四六時中一緒に居る必要
はない。2年前、半年間会わない時期があった。それぞれ別のグループで世界を
旅していたからだ。それによって、俺たちの愛や結びつきが損なわれることはな
かった。代わりにもっと絆を強めてくれたよ」

「君は彼と一緒で幸せかい?」僕はクリスティーナに尋ねた。というのも、バウ
チの前のパートナーが、そうではなかったことを知っているから。

「ええ。でもそれは、私が自分で幸せでいられるからよ。私が幸せでなかったら、
彼と一緒にいても幸せじゃないわ。私が幸せでいられるために、彼が出来る限り
のことをしてくれたことは分かっている。でも、自分で幸せになることを学ばね
ばならなかった。バウチと共にいて幸せでいることは、実際、難しいことではな
いの。だって、彼は普通、自分で幸せでいられるから。でも、彼と共に幸せでい
るためには、まず自分が幸せでなければね」

「君が俺のところに話をもってきて、俺が一週間後にウィーンにいることを予言
したとき、俺をからかっているのかと思ったよ。でももし君がそう言わなかった
ら、そしてその通りにならなかったら、君の言ったことは何一つ信じなかったろ
うな。俺たちみんながいかに繋がっているか、今ならわかるだろう?」バウチが
念を押すように言った。

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