2020 The New Earth A travel report【7】神について

2015/12/13


「2020 The New Earth A travel report-6」の続き…

神について

マニュエルが僕に呼びかける。

「トウモロコシをくれた畑に感謝しないと」

僕はそう言われて今気が付いた。
彼が食べ残しのトウモロコシを、祈りをこめるように畑に「返していた」ことを。

僕はあわてて畑を振り返り、感謝をこめてお辞儀する。
おかしくて笑ってしまう。

僕は、食べ物に対してこういう態度を持つことが気に入った。
車に戻ってから、僕たちは数分の間しゃべらずにいた。

「それで何が知りたいの?」
彼が尋ねる。
「うん、まあ、あなたが神についてどう考えているのかなって。

まだ宗教があるなら、どの宗教が残っているの?神の存在は、もう証明された?」

彼は笑い出す。
「一度に随分たくさんだな。

君に何か教えてあげることはできるが、証明はできない。
こういう事柄は、そう簡単には説明され得るものじゃない。

僕は説明を試みることはできるが、君の信念が疑いに染まっている間は、君には理解することができない。
実際の経験を取り逃がしてしまうからね。

幸いにも、今の君なら大丈夫だ。
だから僕は、君の宗教についての質問を取り上げ始めたのだよ。

僕は、みんながそれぞれの宗教をもっていると思う。
その上で、僕たちは宗教をめぐって互いに戦争をしたり、殺し合ったりするのを止めにした。

そんなことには、もはや誰も関心がないよ。
僕たちは、僕たちみんなが嘘をつかれていたってわかったから。

それに我々は、宗教の教義を通して神を見つけることも、我々自身を見つけることもできない。
神を探すことは、我々自身を探すのと同じく、時代遅れになった。

そして我々が自分自身の内側を見始めたとき(そのことはね、アミーゴ、これまでとはまったく別の結果を生じさせたんだ。
それについては後で話すよ)、我々はすぐに、自分たちが互いに依存し合っていて、互いに繋がっていることを見出したんだ。

我々は全体像が見えるようになって、自分たちが探していたものを見つけた。
それは、我々がありとあらゆる名前を付けていたものだった。

そして我々は謙虚になった。
気持ちのいい謙虚さは内側からくる。

我々が宗教で教えられたような謙虚さとは違う。
内側に、我々は神ばかりか、我々自身をも再び見出した。

そして我々みんなが「神」であることも。
ついて来てるかな?」

僕は、彼が言ったことについて、しばらく考えた。
彼の説明についていくのは難しくない。

彼は明らかに、僕に何かを納得させることに、何の興味も持っていない。
そのことは僕にとって、何か爽やかな新しいものだった。

僕の考えを読み取ったかのように、彼が続ける。
「君が信じることを選んだものは、君が自分のために決断したものでなければならない。

君の選択は、何であろうが正しい。
あらゆるものが、君の総体的な見方を反映しているのだから」彼はここで微笑んだ。

「そしてそれぞれの見方は、いずれもまったく本物だ。
君が本当だと信じるものは、君の認識通りに自らを表すことができるし、そうするだろう。

大きながらくたの山でさえ、過去に、あらゆる種類の戦争の、もっともらしい理由に利用された。
君が何かを選ぶときには、必ず君が気持ちよく感じるものを選ぶのだよ。

そして他の人にもこの権利を認める。
すると、神についての質問は、もうあまり意味がなくなる。

僕の個人的なアドバイスは、あくまでも僕の意見だが、自分自身を神性の存在として見ることだ。
何の疑いもなく、そのような存在として見ることだ。

宗教の教義は、それとは逆に考えるように教える。
神と人間は分離していなければならない。

そうすれば、人々は完全性――知覚されうる全創造物とともにある、
創造主の完全性――を感じないからね。

もし君が、君の信念が何の役にも立たないと気付いたときは、君はいつでもそれを変えていいんだ。
予期せずに巡り会った何か他のものにね。

あの当時、我々には宗教を選ぶ自由があった。
今、僕たちはそれを実践できる」彼は笑いながら付け加えた。

僕にもそれは避けられない。
しかしこの瞬間、僕は愛で一杯だ。

マニュエル、 サミラ、トウモロコシ、音のない車、目にする人々、そして僕に道を教えてくれたカモメに対する愛で。
突然、そのすべてに繋がっているのを感じる。

一なるものとして。
彼の言葉が僕の中の何かを揺り動かしている。

長い間滞っていた何かを。
「生命体を」と彼が言う。

「何?」とボーッとしたまま僕は答える。
「生命体を、あまり分類しないことだな。

人々、君、僕、サミラ、カモメ、動物、植物。
そのように区別することで、我々はあまりにも長い間、ずっと自分たちの道を塞いできたんだ。

つまり僕が言いたいのは、何でも君の好きなように見たらいい。
けれど、身の周りのあらゆるものを、ヒエラルキーの中にあてはめることなく、ある命の形として見るようにしてごらん、ということ。

そうすると、あらゆるものを同等なものとして見るようになる。
ドラッグ・トリップするような気持ちよさに襲われる。
麻薬を使わずに」

彼は笑みを浮かべて言った。
僕は、間違いを指摘されたようにはまったく感じない。

彼のアドバイスを受け入れることにした。
「それなら神は、僕らを通して自分自身について学んでいる。

僕らはみんな神なのだから。
そういうこと?」

「おや、おや、ものの見方を変えたばかりなのに、随分はやく新しいものが見えるようになりましたね。
悪くないぞ、アミーゴ。
君は飲み込みが速いな」

褒めてもらって嬉しい。
気分は最高。

僕は、自分が嵌まり込んだ奇妙な状況を忘れている。
突然、何もかもがとても面白くなり、ここにいることに感謝の気持ちで一杯。

僕は情熱家だ!
「信じられない速さだよ。

我々がものの見方を変えるまで、どれくらい時間がかかったかを思うと」彼が目の端で僕を見ながら、そう言う。
「君は今なら、世界がたった5年でいかに大きく変わり得るか、信じられるでしょう?」

「ちくしょう!」心の中で僕は言った。
彼はただ笑っている。

それからの車中、僕たちは黙ったままでいた。
方向を指示する僕の声だけが、時折沈黙を破った。

農場の門の前で車が止まると、僕は「友だちはまだそこで暮らしているだろうか?」と言った。
「教えてあげられるけど、君が自分で見つける楽しみを台無しにしてしまうから ね」彼は、さっきのサミラみたいに秘密めいた調子で答えた。

トゥルーマン・ショーの中にいるみたい。
他の人たちは皆、僕について何かを知っているようなのに、何も言いたがらない。

僕も今は何か言えるような気分じゃない。
僕は、僕の運転手に体を寄せて、心からのハグをして、送ってくれたことに感謝した。

「僕は君にありがとうって言わねばならないよ、アミーゴ!君に会えて、僕は本当に信じられないくらい喜んでいるんだ。
僕らはまたすぐに会えるさ。

じゃ、またね!」その言葉を聞きながら、僕は車のドアを開ける。
車から降りて我が家の前に立ち、ショックを受けた!

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コメント一覧

■akibo  2015/12/19  60.155.137.233
コメントID:87

美しい
なぜか、美しい映画を見ているようです。「美しい緑の星」の現実版のよな。有難う御座います。
■サイト管理者  2015/12/19  コメントID:86
大変失礼いたしました
219.117.204.56
12/17日に記事内容が重複と閲読者の方からご指摘を受けました。
訂正いたしました。
前回の内容のまま登録ボタンをクリックしていました。