2015/12/13
「2020 The New Earth A travel report-4」の続き…
エリートから力を取り戻す僕が「みんな・・・・・・君たちみたいなの?」と聞くと、今度はサミラが、「そうでないことを願うわ」と答えた。
「でもあなたが何を言いたいか分かるわ。
あなたもすぐに、人々が変わったことを自分の目で見ることになるわよ。
今では、私たちはお互いにすごくフレンドリーなの。
地球はとても親しみのある場所に変わったのよ。
あなたは、動物たちも変わったことに気付くでしょうね。
エネルギーの変容が動物たちにも影響を与えたの。
今ではずっと人間を信頼している。
多分、私たちが、もう軽々しく動物を食べなくなったからだわ。
たとえまだ私たちがそうするにしても。
あなたはフェンスがないことも気付くはずよ。
あらゆるものが、すべての人に利用されているから。
それもまた、誰にも命じられずに起きた変化なの。
所有権という考え方は消えたの。
つまり、誰も自分のものを取られる心配がないということよ。
誰もが必要なものを何でももっている。
だって、何でもそこにあり、今では自由に利用するだけなのだから」
「エリートがそんなこと黙って許したの?」
と僕が聞くと、二人ともにこやかな 顔で僕を見返した。
「エリートねえ・・・・・・」とマニュエルが言う。
「君の考えでは、誰が力をもって いるんだい?」
「まあ、政府、企業、銀行などピラミッドのトップにくるものでしょう」
「私がさっき言った通り、2015年に私たちみんなで、ピラミッドに盲従しなくなったとき、ピラミッドは崩壊したの」とサミラが言った。
「いわゆる有力者には、それを止めることができなかったわ。
だって彼らに力なんてないのですもの。
少なくとも、誰かが他の人より多く力をもっているわけじゃないわ。
私たちは気付いたの。
私たちが、エリートも含む、私たち一人一人が力をもっており、かつ また、この力が引き起こしたあらゆるものが、私たちのものであることをね。
誰かが他の人を支配することもできるわ。
もし人々がそれを許すなら。
この服従こそがすべての醜い出来事の原因だったのよ。
戦争、飢饉。
だから私たちは少しずつ力を自分たちに取り戻したの。
私たちが正しいと思ったことや、互いの助けとなることをを行うことで。
そうやって長い間隠されていた幻想が暴かれて、もはや影響を及ぼせなくなったの。
そのことが、おそらく、変化を引き起こした一番重要な要素だわね。
私たちは、取り戻した自由を行使した。
自由と共に私たちの力もね。
いかに私たちの日常行為が、自分たちに影響を及ぼすか、私たちは少しずつ学んでいったわ。
どれほど私たちの行ったことが、実際に私たちを傷つけていたか分かったの。
私たちがそれを認識したとき、私たちはほとんど自然にそれをやめたわ。
私の知る限り、当時、超人的というか、超常的なことをした人が誰いなかったという事実に、驚異の念を持たざるをえないの。
まったく突然にすべてが可能になり、私たちがこれまでとは違う振る舞いを始めたとき、私たち皆、良い振る舞いができるようになっていたわ。
人生はまた楽しいものになったし、多くの人たちにとって、それは何か新しいものだった。
だから私たちは人生をも っと享受しようと思ったの」
僕は「つまり、君は僕に、もはや犯罪や飢えや憎しみや戦争が一切無いと言っているんだね?」
と疑わしげに尋ねた。
「まずないよ」
とマニュエルが言う。
「警察も刑務所もないし、弁護士や裁判官も、もういない。
誰だって間違いは犯すが、我々は、罰する代わりに助ける方に興味があるんだ。
間違いを犯す人たちの幼少期の問題を割り出せるような情報に関心がいくし、大事に思う。
二度と過ちを犯さないように助けてあげられるからね。
そのために暴力はもう必要ないんだ。
僕らは、必要なのは理解することだと知っている。
以前は、理解するための情報が監獄にしまい込まれてしまったが、今は誰もが豊かに情報を得られる」
「それなら、あなたは犯罪者に同情するの?」
僕は知りたいと思った。
「いいや、我々はただ一つのことが別のことにどう導かれていくか理解して、皆 互いを見守っているんだ。
何か問題に繋がるようなものを見たら、我々は割り込んで、それを避けるように助ける。
その方が、そういうことが起こるがままにした神を責めるより、ずっとましだよ。
神を責めても結局は、それが起こるがままにして、十分気にかけてあげなかったのは我々の方だと思い知らされるまでさ」
「神についてはどう考えているの?」
と僕は尋ねた。
「そのことは、君を送る途中で喜んで話すよ。
君は自分の家がどうなっているのか気になって仕方ないようだ。
君の立場になってみれば当然だ。
さあ、行こう。
途中でいろいろ見せてあげるよ」
僕はサミラに目を向けた。
「そうしてちょうだい、二人とも。
気にしないで、ネイサン。
また会えるわ。
そう感じるの。
いつだって心の底からあなたを歓迎するわ」
僕らは立ち上がって別れの挨拶をした。
彼女は僕を長いこと愛情を込めてハグしてくれた。
そして僕にも、マニュエルにしたのと同じような親密なキスをした。
僕はショックで反応できず、気付くと膝の力が抜けていた。
それから彼女はマニュエルにも同じように接した。
僕は、頭の中が真っ白だったが、僕の内側では喜びが弾けていた。
「君もすぐに慣れるよ」
マニュエルが、彼女から体を離すとき、笑いながら言った。
「今の世界は愛に満たされているんだ。
我々が5年間かけて築いてきたんだよ。
2015年からのタイムトラベラーには、さぞかしショックなことだろうと思うよ」
彼は僕の腕を取り、僕たちは車へ向かった。
ボーッとしたまま、僕はサミラに手を振る。
僕のタオルが彼女の肩にかかったままだ。
それから彼女が視界から消えた。
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