2020 The New Earth A travel report【4】マニュエル

2015/12/13


「2020 The New Earth A travel report-3」の続き…

マニュエル

「ほーらね。言った通りでしょう」
サミラは歓声をあげている。

「マニュエルだわ。迎えに出ましょう!」
彼女はもう彼のそばにいて、僕は出遅れた。

彼女は彼を抱きしめて心からのキスをしている。
僕は「ああ、彼女のボーイフレンドか旦那さんなのだな」と思い、自然に歩みが遅くなる。

二人はハグし終えると、サミラが僕のところに戻ってきた。
「マニュエル、こちらはネイサン。
ネイサン、こちらはマニュエル。

ネイサンが ちょうど立ち寄ったので、一緒にレモネードを飲んでいたところよ。
彼はとても面白い話を聞かせてくれたの」

大きなフレンドリーな笑みを浮かべて、マニュエルが僕に近づき、挨拶のハグをする。
僕はそれに抵抗できなかったが、あまり抵抗したいとも思わなかった。

彼のフレンドリーなカリスマ性が、僕に安心感を与えてくれる。
「ようこそ、アミーゴ。
君に会えて嬉しいよ。

ちょっと混乱しているように見えるけど、大丈夫かい?」
僕は当惑した。

何て人たちだ?僕は、僕の周りにヒッピーがいることに慣れているし、僕自身も似たような者だと思っている。
互いに親しく触れ合うことにも慣れているし、男同士でハグすることさえある。

でも、ここでは・・・・・・何かが違う。
より本物でとても自然だ。

僕には説明できない。
彼は真っ直ぐに、僕の「すべては大丈夫さ」というすまし顔を見透かして、直接それを口にしたのだ。

とて も思いやり深い人物だ。二人の思いやり深い人たち。
それでも疑問は残ったまま。

僕はどこにいるのだろう??

マニュエルが
「どんな話をしたんだい?」
と家に続く道の途中で聞いてきた。

僕は、サミラが僕に話してくれたことよりも、僕の話の方が彼らにとってずっと面白いことに気が付いた。
僕はすっかり混乱しきっていたので、座らなければならない。

僕は目眩に襲われた。
すると、二人は即座に僕を支えてくれた。

「しっかりして。
君をベランダに連れていくよ。

そこで気を取り直したらいい」
僕にはどちらがそう言ったのかさえわからない。

気付くとベランダの椅子に座っていた。
僕はグラスを取り――3杯目の極上レモネード。

この暑さにもかかわらず、まだひんやりしている――少しすすった。
サミラは屋内に入っていき、マニュエルが僕のそばの椅子に腰掛ける。

僕は、彼が注意深く僕を見守っているのがわかる。
僕は再び彼の大きな愛情と暖かさを感じ取った。

それは僕には説明できないものだ。
僕は、まるで自分が世界で一番重要な人物であるかのように尊ばれ、気遣われているのを感じた。

それは言葉では表現できないものであり、まったくさりげないものだった。
彼が笑みを浮かべて
「良くなったかな、アミーゴ?」と尋ねる。

僕は彼を見て、彼の眼差しに心打たれた。
僕は、本当に友人たちには恵まれている。

何かあったとしても、共にうまく切り抜けていくだろう。
しかし彼の眼差しは、愛と思いやりと慈悲に満ちており、僕には馴染みのないものだった。

しかし、居心地の悪さはまったく感じない。
それは誘惑とかゲイとかには一切関係なく、父と息子の間にあるようなものだった。

サミラがクッキーのお皿を持って戻り、卓に加わった。
僕は喜んで一つつまむ。
すごくおいしい。
「ネイサンは 2015 年の9月以降に起きたことを何も覚えていないの。

たとえ、経験していたとしても」サミラがこう 言ったのは、マニュエルがまだ僕に何も聞いていないと思ったからだろう。
マニュエルは眉を上げてみせたが、何も言わない。

僕が何か言う機会を与えてくれているのだ。
僕は簡単に話を繰り返すと、彼はとても興奮した。

「よくある話じゃないよねえ」
彼は笑ってから、
「気分は良くなったかな、大丈 夫かい?」と単刀直入に尋ねた。

僕は大分良くなったので、そう答えた。
ともかく、二人のおかげで、僕は混乱の中で自分を見失わずにすんだ。

「サミラは、僕がどこにいるのか教えてくれたのだけど、僕の頭はそれを信じた がらない。
タイムトラベル? 記憶喪失の可能性はもっと薄い。

だって2週間 前の脚の擦り傷が、とっくに治っているはずだもの。
それに5才も年をとったなんて思えないよ」疑問点を話しているうちに、僕の頭がすっきりしてきたようだ。

感覚が戻り、自分に何が起きたのか本当に知りたくなった。
「さて」
深く考え込んでいたマニュエルが口を開く。

「もし君が本当に自分に起きたことを知りたいのなら、まずはそれを信じないと。
もし君が何かの存在を信じなければ、君はそれを理解することができないよ」彼はそれを自明のことであるかのように、そして愛情を込めた調子で言った。

「僕自身はまだタイムトラベルを経験したことないが、インターネットでは、タイムシフトを経験した人たちがどんどんレポートをあげているよ。
そういうこと に興味をもって調査に没頭しているグループがある。

僕たちが、時間は直線的ではなく、空間は、僕たちが前もって存在を把握することにおいて存在する、と学んで以来、僕たちの目の前には、調査すべき、まったく新しい時空連続体があるんだ」

「待って、ストップ! 一つずつお願い!インターネットはまだ存在していて、時間は直線的じゃないの?」
と僕は尋ねた。

彼らは二人とも心から大笑いしたので、僕も一緒に笑わずにはいられなかった。
自分の言ったことの何がそんなにおかしいのかわからないが。

「インターネットはまだここにあるわ。
多分あなたにはそれを認識できないでしょうけど」僕たちの笑いがおさまってからサミラが説明する。

「そして時間は直線的じゃないのよ。
私たちはただそのように知覚しているだけ。

昔アインシュタインが言っていたでしょう。
時間は相対的なものであり、時間に限らずあらゆるものがそうだと。

あらゆるものは観察者の視点から見られるわけだから、あらゆ るものが相対的なのよ。

5分間があっという間に感じる場合もあれば、永遠に続くように感じるときもある。
人によってそれぞれよ。

これまでの定説が消えてからは、それを探求する価値があることが、私たちに明らかになってきたの。
最初 の人たちがそれを探求し出したら、異常性のレポートが次々に集まり始めたのよ」

「ごめん、ちょっと質問させて。
UFO はもう着陸した?」
彼らはプッと噴き出し爆笑した。

だから僕も笑わなきゃならなかった。
どっきりショーみたい。

「いいや、ネイサン、僕のアミーゴ。
それはまだ起きていない。

それが起きるのを待っている人はまだいるけど、僕たちしか宇宙にいないと思っている人は、地球にはいないと思うよ。
絶対、僕らだけが唯一の知的生命じゃない。

今日では、僕らが『ここから来た』のではないこと、宇宙によって命が創られたが、地球で 発達したのではないことを、僕たちは皆知っている。
僕たちが周りで見ているものすべて、何もかもが意識によってまとめられているんだ。

僕たちは地球の外に存在するものと接触しているよ。
僕らのインナーネットを通じてね。

ますます多くの人たちがアクセスするようになってきたんだ」
マニュエルは僕のいぶかしげ なな顔つきを見て続けた。

「すべてのものがあらゆるものに繋がっている。
つまり、分離というものは存在しないんだ。

それは僕たちの想像の一部。
だって僕たちが知覚するあらゆるもの が僕たちの想像の一部なのだから。

僕たちがあらゆるものを我々自身の中に知覚するのはそのためだ。
そして我々自身の中にすべてであるものに通じる戸口がある。

テレパシーを知っているだろう? 僕らが話題にもしていないことを、言い 当てることができるよ。
例えば、僕が戻る少し前に、サミラは、僕が間もなくここに着くことを感じただけではなく、それを君にも伝えた。

こういうことは、僕 が今言ったインナーネット上で機能するんだ。
その名前はほとんど自然についた 名前だよ」

「午後のひとときにしては、随分たくさんの情報だったなあ」
僕は深呼吸しながらそう言った。

「あそこのタワーは何? ニコラ・テスラの実験を思い出すのだけれど」
気を立て直すために話題を変えようとした。

「よく分かったね。いい線いってるぞ」
マニュエルが笑いながら言う。

「たった今僕は、車がいかに静かに走るか考えたんだ。
僕とサミラにとって、それは何も珍しいことではないし、いつもと違ったところもなかったので、僕はその考えが君から来たのだと推測した。

この通り、僕たちは皆繋がっているんだよ。
君だってそうさ。

君がまだ意識的にそれを利用できないとしてもね。
君はいつだってずっと繋がっていた。

タワーは特定の場所に建っていて、テスラが『スペー ス・エネルギー』と呼んだものを我々に供給しているんだ。
2016年に、それにアクセスできるようになった。

それを開発している研究者が、迫害されて中断させられたりしなくなったからだ。
最初の実用モデルはあっという間に利用できるようになり、今も進化している。

中には、景観を損ねないように植物で覆って見えなくしているものもある。
私たちにエネルギーを供給しているだけでなく、インターネットも電話もそれらを通して使えるようになっているんだ。

車もこのエ ネルギーを利用して走っているよ。
タワーに近づくと自動でチャージされるバッテリーが搭載されているんだ」

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