2020 The New Earth A travel report【3】変化の始まり

2015/12/13


「2020 The New Earth A travel report-2」の続き…

変化の始まり

「あなたは 2015 年の前半まで経験して、あなたの今は6月の半ばなのね。
だったら、まだあなたは2015年の大変化を経験していないわ。

大勢の人にとって大きな変化の年だったのよ。
特にその年の後半は、大変化の時だったの。

きっと他の人たちが、もっと詳しくあなたに説明するでしょうから、私は本質的なことだけ話すわね。
その変化は一夜で起きたみたいだった。

政治情勢が劇的に悪化して、当時は、ヨーロッパは大戦争に直面していたの。
でもほとんどの人たちにはわかっていたわ。

自分たちが創り出さなければ、戦争は起こらないって。
だんだん人々は、上からの命令を無視し始めるようになった。

上に協力するのを拒否して、自分自身の権威のもとに生き始めたのよ。
インターネットも私たちが国際的に組織化するのに役立ったわ。

このようにして私たちは互いに助け合い、行動を起こし始めたの。
それぞれがそれぞれのやり方でそうしたのだけれど、決して一人で 孤立してたわけじゃない。

私たちは、自分たちの権利と常識を守るためにそうしたの。
それはあらゆるレベルで同時に始まったのよ。

親も子供も一緒になって、強制的な学校規則を無視し出した。
多くの人たちが、もはや仕事には行かなくなって、公園と森に突然興味を引かれるようになったの。

私たちの周りの生命体が、個人レベルで一層大切なものになり始めた。
だって、私たちは相互依存の関係にあるのだから。

たとえ、同じ人間の本質、ましてや動物の本質に気付いていないとしても、そうであることに変わりない。
賃借人は所有者に賃借料を払うことを止めたの。

だから所有者も銀行に返済できなくなった。
大手の銀行家は辞職し、連帯することを表明した。

政治家までもが、行動を共にすると言い出し、自分の地位を捨てた。
起きたことをうまく言い表すには、民衆が階層制度のピラミッドを崩壊させた、と言えばいいわね。

いくらか社会的動乱もあったけど、以前ほど大きなものではなくなった。
平和でいられるようになったので、そのような動乱からくる不安が打ち消されていったの。

以前のシステムでは、人々は永遠にストレスに晒されていたけれど、そういう人が少なくなったので、平和でいられるようになったのよ。
空いた時間は自分たちのためにあてたの。

私たちは、互いに対立するのではなく、共に良い生き方がで きるように、世界中で繋がってアイデアを交換し合った。
本当は不足していたものなんて何にもなかったのよ。

利用できなかっただけ。
お金が厳しく統制されていたから、不公平に分配されていたの。

しばらく経つと、主流メディアも変わらざるを得なくなった。
問題指向の番組制作をしなくなり、本当に問題解決を励ますようなものが出てきたの。

他にも、とても重要な変化があったのよ。
私たちは、自分を他者の上におこうとすることと、他者に恥をかかせようとすることを、ほとんど自動的にやめたの。

最初は、風のささやきみたいだったのが、突然誰もがそれについて話していたわ。
もし私たちがネガティブな面だけ見続けて、他人のよそよそしさや、弱点や間違いだけに心がとらわれていると、結局自分たちが損するだけなの。

私たちの時間の90%を批判に、10%を称賛することに費やす社会では、人生がちっとも面白くなかったのは当然だわ。
誰もが、自分が顧みられていないように感じ、私たちは皆、もっと成長するように駆り立てられるけど、誰もがそうするだけの熱心さを失っているように見える。

たとえあなたがベストを尽くしても、ほとんどネガティブなフィードバックしか得られず、それだと人生の面白みが奪われていくわ。
次第に、そういうことに無関心だった人たちも、私たちが互いに交流し合う中でそのような変化が起きたことと、誰もがいつでも別のやり方を始められることを悟ったの。

そのようにして、2015年の終わりまでには、大勢の人々にとって人生はより良いものになった。
なぜなら人々はこれまでとは違うように振る舞い 始めたからよ。

人々の周りに、ストレスとなる人がいなくなり、居心地のいい人 ばかりになったとき、人々は相対するものに美と善性を見始め、人生を享受し始めた。
人々は批判するより褒めるようになったのだけど、それはさほど難しいことではなかったわ。

特にその年の終わり頃、メディアが変わり始めてからは。
そして、ごくわずかな人しか夢見ていなかったことが起きたの。

私たちは、互いの中に戻る道を見つけたのよ」
僕は今聞いた話に心を奪われた。

僕は夢を見ているに違いない。
そんなこと現実であるわけがない! 数回、腕をつねったら痛かった。

僕の人差し指も、野外炉で実際に経験したことを思い出させた。
サミラはレモネードを一気に飲み干し、僕もそうした。

喉の渇きが暑さのせいなのか、僕がはまり込んだ状況のせいなのかわからなかった。

「私はもう十分話したわ。
家に帰りたいと言っていたけど、裏に自転車があるはずよ。

でもよければ、もう少しいればいいわ。
マニュエルがもうすぐここに来る気がするの。

彼は喜んであなたを車で送っていくわ。
彼がきっと車の中で、もっといろいろ教えてくれる」

僕は返事をせず、例のタワーを見ていた。
終始気にかかっていたタワーを。

「あのタワーは何のためにあるの?」
僕は尋ねたが、彼女が答える前に、一台の車が私道に入り、近づいてきた。
まったく音もたてずに。

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