2020 The New Earth A travel report【22】ハウスメイト | キーンエリアニュース【Keen-Area】


2020 The New Earth A travel report【22】ハウスメイト



「2020 The New Earth A travel report-21」の続き…

ハウスメイト

「来て。邪魔の入らないところへ行きましょう」タマラが僕を励ますように言う。

僕は彼女の手を取り、忠犬のように彼女について行く。犬との唯一の違いは、浅速呼吸をしていないだけ。いくつかの道を進み、家々や植物だらけの庭を通り過ぎ、僕は見慣れないものに気が付いた。ドアにベルみたいに何かが掛けられている。緑色をしていたり、赤色をしていたり、半々ぐらい。

そういえば、マニュエルの車のボンネットにもあった。一色しか見えなかったけど。僕たちが緑色のものが掛かっている家に着くと、タマラが言った。「この家は空いているわ。私の好きな家なの。入りましょう」自動的に彼女の後をついていくと、そこはキッチンだった。夢の中のように場面が変わる。

彼女はカップボードを覗いてボウルを取り出している。

「ここで待ってて。何か食べるものをとってくるわ」

と言っていなくなる。僕は本当に何も考えずにあたりを見回した。すると突然、男がドアの所に立っていた。

「やあ、なんか役に立てることはないかい?」

と彼が言う。

「いや、有り難う。ここでタマラを待っているだけだから」と僕は答える。
「その人のことは知らないけど、君は自分がしていることをわかっているのかな。あたりを存分に見回したらいいさ!」
彼は行ってしまった。
自分がしていることをわかっているかって? いいや。見当もつかない。ただ観察しているだけ。僕はここでそれを経験するために、観察するためにいるんだ。判断したり、奇妙なことを見つけるためじゃない。最初はそうだったかもしれな いが、ジャックのおかげで、今、ここで僕たちは観察している! それで十分。
僕たちは、何をするのかわからないときは、パパが僕たちに何もしないことを求 めているって知っている。取り乱したり、次は何をするのか尋ねたりしても無駄 なこと。これから起きることを変えられるわけじゃないんだから。
タマラが部屋に戻り、僕にニコニコ微笑みかける。ボウルは果物で一杯。
「僕、君のハウスメイトに会ったのかと思ったけど、彼は君のこと知らないって」 勢いづいた口調で言った。
タマラは困惑した表情で僕を見ると、笑い出した。
「私、ここには住んでいな いの。それでも彼は私のハウスメイトよ! 説明させてね。今日では誰も固定し た家をもっていないの。私たちはみんな自由で、どこへでも好きに移動できるわ。 居住空間もシェアし合っているの。ルールは簡単よ。赤いマークがあれば、邪魔 しないでくださいということ。だから、中の人が出て行くのを待つか、緑のマー クの場所を探すかするの。昔の公衆トイレみたいなものね。この時代にもあるけ れど。去るときには必ず、次の人が気持ちよく使えるようにして出るのよ。 食べ 物は至るところにあるし、ごみを持って出る必要もないわ。ごみはほとんど出な いし、すごく暮らしやすくなったのよ。最高なのが、もう家賃を払ったり、何十 年もローンを返済したりしなくていいこと。もちろん、もっといい場所もあるけ れど、一回使ったら、しばらくしてからまた使うのが基本よ。世界は、同じ場所 で人生を送るのが惜しいと思うくらい、あまりにも面白い場所になったのよ。ハ ウスメイトしかいないわけだから、さっきあなたが会った人も私のことを知らな い理由が分かったでしょう。私たちにはどこにでも自分の家があるの。それは本 当にすごい違いなのよ。さあ、どうぞ食べてちょうだい」
僕はリンゴを取ってかじる。喜びの波が僕を襲う。今でもLSD トリップのよ うに感じる。
「家賃がいらないって?」
「ええ。家賃も何もいらないの。世界は、特に製品には、もうお金が必要ないの。 私たちに必要なのは、緑か赤かを示す小さなスライディングハッチだけ。もうこ れ以上簡単にしようがないほど簡単になっているわ。0と1。あなたのものと私 のもの。今は誰もお金を使わない。もう必要ないからよ。近頃じゃお金はほとん ど使われないし、私はお金を使っている人を誰も知らないわ。
何でも自由に利用 できるのに、どうして使う必要があるの。みんなに十分行き渡るように、誰もが 自分にできることをしているわ。以前もそうだったはずのよ。今日、私たちは、 エネルギー、お金を吸い上げて我が物にする支配組織や団体を必要としていない の。私たちは社会システムのために一日8~10時間労働をしていたけど、今は いつでも自由に使えるわ。
自分の愛していることをして、絶えず自分を向上させ ているのよ。私たちにはカレンダーも、もうないの。私たちは、約束の時間に会 うのではなく、会うようにインパルスを受けたときに会うの。あなたは自分のイ ンパルスに従う以外、何もする必要がない。それでもあなたは誰にでも会えると 断言するわ。あなたが望んでいる限り、あなたが会いたい人には誰にでも会える。 常に会うべき人物にね。私たちの信念や考え方のせいで、以前は無理だったけど、 それもやっぱりいつでもそうだったのよ。まだキッチンの中で座っていたい? それとも部屋に行く?」
僕はまだリンゴをかじっている最中だったので、残ったリンゴの芯を彼女に見 せた。彼女はドアの外を指差して言う。
「あそこのリンゴの木がスナックを欲しがっているわ。私について来てね」
僕は感謝しながらリンゴの芯を木の下に放る。そして期待を胸に彼女について行 く。この女性は何か言いたいことがある。そして僕のフィーリングはそれだけじ ゃないことを告げている。
僕たちは階段を上がってあたりを見回す。廊下はいくつかの部屋に通じており、 一つの部屋のドアが開いている。目印は緑になっている。バスルームだ。二つの 部屋の目印が赤になっているが、ドアは開いており、中には誰もいない。
「利用中で、誰かがすぐに戻ってくるんだな」とジャックが言う。他の三つの部屋 は緑になっているが、ドアは閉まっている。タマラが一つの部屋のドアを開けて 中を覗き、僕を見る。
「この部屋はどう?」彼女が柔らかい声で言う。
僕は中に入って見回す。美しく飾られている部屋だ。ダークレッドのカーペッ ト、壁にはカラフルな絵、カップボード、コーナーの二脚のアームチェアー、長 椅子、壁に備えつけてある本棚。部屋の奥にはベッドがある。樹皮がついたまま の二本の丸太の上にベッドが渡してあった。「共有物だ」と頭に浮かぶ。全部自 由に使える。次の人が気持ちよく使えるようにしてから出ていけばいいだけ。
タマラが目印を赤にスライドさせてドアを閉める。彼女はフルーツボウルをベ ッドに置く。僕は本棚の前に立ちっぱなし。僕の習性なんだ。本棚を見つけると、 どんな本が揃えてあるのか見ずにはいられない。僕は、「本を見ればその人がわ かる」という言い回しをよく使ったものだ。たくさん本を読んできたし、いつで も本には強い興味があった。本棚の一冊が目に飛び込んできた。カフカとブコウ スキーの間にあるやつ。僕は著者の異名を知っている。"Jesus Urlauber(Bauchi)" そして"2020"。僕がその本を取り出すと、タマラがそばに来て訳知り顔に微 笑んで言った。
「それはあなたの物語でしょう?」
「うん。バウチが朝食をとるときに教えてくれたんだ。何を僕がここで経験して いるのか、なぜ周りの人たちがそれを知っているのか。彼が言うには、僕がここ での経験を彼に話し、彼はそれを本に記したということだ。本当に一瞬その本が 光ったんだ。夢みたいだよ。だけど僕はすべてが本当に夢であり、すべて繋がっ ていることに慣れてきた。それでもやっぱり僕にとって、この読み古された本は 驚きだ。本当にこの夢にさわれるのだから!」

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2016/01/19 / 1423PV

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